第1回:「Fusion 360で学ぶ衛星電源の熱設計とCAE解析の活用」

last updated : 2024-11-04

はじめに

宇宙空間での衛星電源は、通信、姿勢制御、推進系への安定した電力供給に不可欠です。しかし、真空環境では熱の対流が使えないため、伝導放射だけで熱管理を行う必要があります。適切な放熱設計ができていないと、電子機器の性能劣化や故障リスクが高まるため、電源の設計段階から熱管理は極めて重要です。

このシリーズでは、Fusion 360のCAE解析機能を使い、衛星向け電源(PCDUやPPU)の放熱構造を解析し、最適な設計手法を探っていきます。


衛星の熱管理における課題

宇宙空間は極限環境です。太陽の照射を受ける側では100°Cを超え、一方で影になる部分では−100°C以下になることもあります。こうした環境下で電源ユニットを正常に動作させるには、以下の課題があります:

  • 真空環境での放熱:対流冷却が不可能なため、放射と伝導が唯一の熱管理手段
  • ホットスポットの防止:電子部品の局所的な加熱を防ぐ設計が必要
  • 材料選定:熱伝導率と放射率のバランスが重要
  • 信頼性の確保:長期運用で劣化しにくい構造設計が不可欠

Fusion 360のCAE解析の特徴と限界

Fusion 360でできる解析

  1. 定常熱解析(Steady-State Thermal Analysis)

    • 時間経過によらない熱平衡状態の解析
    • ホットスポットの特定や材料の放熱評価が可能
    • クラウドで迅速に解析できる
  2. 伝導・放射解析

    • 部品間の熱伝導と、放射を通じた放熱効果の解析が可能
    • 宇宙空間を模擬した放射シミュレーションも実施できる
  3. 基本的な境界条件の設定

    • 固定温度や熱流束の指定が可能
    • ヒートシンクの効果を評価できる

Fusion 360でできない解析(上位CAEツールとの比較)

  1. 過渡熱解析(Transient Thermal Analysis)の非対応

    • 時間依存の温度変化(例:昼夜サイクルの温度変動)を評価不可
    • AnsysやCOMSOLといった上位CAEツールが必要
  2. 高度な熱応力解析の制約

    • 温度変化による部品への応力の詳細解析が難しい
    • 応力評価にはFEM解析ツール(例:Simcenter)が有効
  3. マルチフィジックス解析が非対応

    • 熱・構造・電気現象を同時解析する必要がある場合は他ツールが適切
  4. カスタマイズ性の限界

    • 非線形材料の解析や特殊な境界条件の設定は難しい

Fusion 360と上位CAEツールの使い分け

用途 Fusion 360 上位CAEツール(Ansys, COMSOLなど)
定常熱解析 対応 対応(詳細なカスタマイズが可能)
過渡熱解析 非対応 対応(時間依存の温度変動の評価が可能)
放射解析 基本対応 宇宙環境に適した高度な放射解析が可能
熱応力解析 一部対応 温度変化による応力解析に完全対応
マルチフィジックス解析 非対応 複数の物理現象を同時解析可能
クラウド解析 非常に有効 一部ツールも対応

CAE解析の効果的な活用法

Fusion 360は、初期設計段階単純な定常熱解析に非常に適しています。クラウド解析を活用すれば、複雑なシミュレーションも短時間で処理でき、プロトタイプ製作前にホットスポットの発見や設計改善が可能です。
ただし、過渡現象や複雑な物理現象の同時解析が必要な場合は、上位CAEツールの活用が推奨されます。


次回予告:モデル作成と材料設定

次回は、Fusion 360を使ってPCDUやPPUのモデルを設計し、必要な材料プロパティの設定方法を解説します。また、宇宙環境に適した材料の選定方法も紹介し、効果的な放熱設計に役立つ情報を提供します。


まとめ

衛星電源の放熱設計は、信頼性と安全性を確保する上で欠かせない要素です。Fusion 360は、簡易な設計検証には最適なツールですが、より複雑な解析が必要な場合にはAnsysやCOMSOLなどの上位ツールが求められます。

次回からは、具体的なモデル作成や解析手順に焦点を当て、実際の設計プロセスを紹介していきます。引き続きお楽しみに!

 

※この記事はChatPGTで作成しました。

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