TVアニメ「四月は君の嘘」特に第13話と第18話が心にささりました

last updated : 2022-10-01

TVアニメ「四月は君の嘘」は、新川直司 原作の漫画。「月刊少年マガジン」(講談社)で2011年5月号から2015年3月号まで連載され、2014年秋アニメとして全22話が放送されました。私は第13話の有馬公生くんが母の思いに気づいて一歩を踏み出すところと、第18話の兄を慕う相座凪さんが有馬公生と関わり演奏家の苦しみを知りながら成長していく場面がとても好きです。

TVアニメ「四月は君の嘘」あらすじ

「四月は君の嘘」は、母からの厳しい指導を受けてコンテストで優勝を重ねる天才ピアニストだった主人公「有馬 公生」が、母の死を境に自分の弾くピアノの音が聞こえなくなりピアノから遠ざかってしまっている。3年後の15歳になる春に自由奔放なバイオリニスト「宮園かをり」と出会い、再びピアニストとして表現者の道を歩み始め、音に思いを込める演奏家として成長していくストーリです。その成長の過程でのキーになる話数が第13話と第18話だと(私は)思っています。

第13話 愛のかなしみ

宮園かをりのバイオリンコンテストの伴奏をした有馬公生が、ガラコンサートで再び伴奏をすることになりましたが、本番当日に宮園かをりが現れません。出演者から宮園かをりを蔑まれたことで伴奏者の有馬公生は宮園かをりの凄さを証明するため、ソロで演奏することを決意します。曲は奇しくもクライスラー「愛の悲しみ」。公生の母が好きだった曲。バイオリンコンサートの中でピアノのソロに戸惑う観衆をよそに、公生の母が好んで演奏していたラフマニノフ ピアノ編曲版の演奏を始めます。公生は、母の好きだった曲を演奏する中で自分の中に母を感じとります。そして、母との繋がりを確認します。自身のピアノの音が聞こえなくなるのは、自分が母に最期に投げつけた言葉に対する「罰」ではなく「おくりもの」だと実感できたと思います。子供の頃の楽譜を完璧に再現する神童ではなく、思いを音にのせる表現者として天才ピアニストの公生が蘇ってきます。母への思いを演奏にのせて、聴衆に感動を残して。そして、母に「さよなら」を告げます。

©新川直司・講談社/「四月は君の嘘」製作委員会

クライスラー「愛の悲しみ」ラフマニノフ編曲版(Youtube)

もちろん、第13話だけで語れるものではありません。それまでのお話があっての第13話です。この回には公生の母の思いが語られています。「でも、私には時間がないの。私がいなくなったら、公生はどうなるの。ちゃんと生活できる。音楽で食べていける。今、私にできることは、譜面を忠実に正確に弾かせること。手に技術さえあれば、将来なんとか食べていけるかもしれない…..  」そして、死を目前にした病床で「ひどい母親。あの子に何も残してあげられない。毎朝、歯磨きできるかしら。どこでも寝ちゃうから、風邪ひかないかしら。運動が苦手だから、大怪我しないかしら。もっと、そばにいてあげたかった。私の宝物。幸せになれるかしら…..」母親が公生に体罰を与えて厳しくピアノを指導していたことを「虐待」と言われても仕方がないですし、それが苦痛だと言う人がいることも理解しています。それを許してあげてとは言いません。ただ、私はこの母親としての子供への思いに共感しました。そして、その母の思いは、公生に届いたと信じたい。

©新川直司・講談社/「四月は君の嘘」製作委員会  

演奏後の公正の紘子さんとの会話。
「母さんは、いつも近くにいました。ピアノのタッチも、指の運びも、ペダルをキュッと踏む癖も、味の好みも、食べる順番も。僕のちょっとした仕草に母さんがいる。僕らは、僕と母さんは繋がっている。紘子さん、母さんに届いたかな。僕の精一杯のピアノ、母さんに届いたかな。」

そして、泣き崩れる公正

「音楽があったから、出会えた瞬間がある。出会えた感動がある。出会えた人たちがいる。出会えた想いがある。これは全部、ピアノを僕に教えてくれた、母さんが残してくれた思い出。母さん、僕は幸せだよ。ありがとう。ありがとう・・・・・・さよなら・・・」


第18話 心重ねる

公生が3年ぶりに参加したピアノコンテストでの演奏を聞いて、公生をヒーローとしてずっとライバル視していた相座 武士は目標を見失ってしまいます。そして、兄を慕う妹の相座 凪 は公生に近づきます。一方、ガラコンサートを病気が悪化して欠席した 宮園かをりは体の自由が利かなくなることで後ろ向きな気持ちになってしまいます。そんな彼女にもう一度演奏への情熱を持ってもらいたいと公生は自らの演奏を聞かせるべく、相座 凪 の学園祭での演奏に自分も参加できる連弾を希望します。そこから、学園祭までの公生と凪の演奏家としてのかかわりで、凪は表現者としての苦しみを知り、また学園祭での公生との演奏で成長を促され、最後には演奏家の喜びを体験します。

©新川直司・講談社/「四月は君の嘘」製作委員会

チャイコフスキー“眠りの森の美女”より「ワルツ」ピアノ連弾(Youtube)

誰かのために演奏することは大切なことだよ。と公生に言われた凪は兄へ、聞いてくれる人たちへむかって思いを届ける演奏をします。公生が練習とは違うひりつくような演奏をみせる中、練習で成長していた凪はくらいつく演奏をみせます。凪は武士へ 、公生はかをりへ思いを届ける演奏を奏でます。二人の演奏が終わり凪は「悩んで喚いて苦しんでもがき続けた先に何もかもが報われる瞬間がある。」ことを体験します。そして、「音楽は言葉を超えるのかもしれない。」ことも、兄が12月に始まる東日本ピアノコンクールでは公生をぼこぼこにしてやると宣言するのをみて実感します。凪の思いをのせた演奏は兄の武士に届いていました。この回では、相座 凪がきっかけはどうあれ、公生とかかわることで、苦しみながらも表現者としての成長をとげるところが心にささりました。「たまらないでしょ人が成長していくのって。」

©新川直司・講談社/「四月は君の嘘」製作委員会  

有馬 公生というピアニストが人々との関わりの中で表現者として成長していくのが「四月は君の嘘」だと思います。物語全編で人との関わりが描かれている中で、私が心に響いたこの2話を選んだだけです。他にもたくさんの関わりが描かれていますし、他にも心に響いた場面はたくさんあります。私にとって「四月は君の嘘」は、全編を通して人は一人で生きているわけではないことを、天才も人との関わりでできていることを、人との関わりが人生そのものだということをあらためて感じさせてくれるアニメです。

有馬公生の人生の物語としてみるだけでなく、宮園かをりの人生として観ても、澤部椿の人生として観ても、人生には多くの人と関わりあって生きていることを、誰の視点で観ても心打たれるアニメだと思います。

四月は君の嘘「2年後」

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