妥当な車間距離とは?「時間で考える車間距離」とは?

last updated : 2023-07-30

車間距離について考える

自動車を運転していると、前の車に近づいて走る車、かなり距離を開けて走る車など色々で、自分自身も前車との距離をどの程度とるのが良いのか迷います。ある程度の基準がわかれば、自分としても精神的にも良いと思うので考えてみました。また、教習所では速度を元に車間距離を考える方法を教えてもらった記憶がありますが、走行中で距離をはかるのは中々難しいので、最近勧められている「車間距離を速度で考える」ことも考えてみます。

まず、自動車の走行中の距離「車間距離」はどの程度必要なのか、道路交通法第26条「車間距離の保持」では次のように規定されています。

第二十六条 車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。

「前の車が急停止した場合でも衝突しない距離を保て」、ということですがその距離について明確に規定されているわけではありません。前を走る車にも制動距離があるのだから、その分車間距離は短くても大丈夫では?との意見もあるかもしれません。しかし、前の車が衝突して停止するかもしれませんし、前の車から落下物があるかもしれません。その場合は、前の車の制動距離は考えられなくなります。


一般道での安全な車間距離とは?

乾燥した舗装道路の場合で、自分の車の速度が 30~60 km/hの場合スピードメーターの数字から15をひいた距離 以上、たとえば 50 km/hであれば 35 m以上の車間距離をとります。60 km/h以上を超える場合は、スピードメーターの数字と同じ距離 以上、たとえば80 km/hであれば80 m以上の車間距離をとります。と、自動車教習所で教わった記憶があります。


高速道路での安全な車間距離とは?

高速道路での車間距離の考え方も一般の道路と同様、速度と同じ車間距離を確保するという目安があります。路面が乾燥していて、タイヤが新しい場合、自分の車の速度が 80 km/hでは約80 m、100 km/h では約100 mの車間距離をとる必要があります。また、路面が雨に濡れ、タイヤがすり減っている場合は、この約2倍の車間距離が必要になります。と、自動車教習所で教わったと思います。

これらの車間距離の数値の妥当性を確認してみます。

自動車が走行状態から停止するまでの距離を「停止距離」といい

停止距離=空走距離+制動距離

停止距離


空走距離と制動距離とを合わせて停止距離とします。空走距離と制動距離はそれぞれ代表する条件での距離を計算で求められるので停止距離を計算で求めてみます。


空走距離

運転者が危険を感じてから(障害物の認知)、ブレーキを踏み、ブレーキが実際に利き始めるまでの間に車が走る距離のことです。運転者が危ないと思ってからブレーキをかけるまでには、多少のタイムラグがあります。その間にも車は実際進んでいきます。その距離のことを空走距離といいます。大分県警が公開している実験データによれば、一般道を走行する車が危険を認識してアクセルからブレーキに踏み替え、ブレーキが利きはじめるまでの時間は、早くて0.6秒、通常は1.5秒以内です。

空走距離の計算式は

「反応時間(秒)÷ 3,600 × 車の速度(時速(km/h))× 1,000」(m)


になります。反応時間は一般的には0.6~0.8秒だということです。車の速度が 50 km/h の場合、反応時間 0.75 秒で計算すると 空走距離は 10.4 (m) になります。


制動距離

ブレーキが作動してから車が停まるまでに走行する距離のことを「制動距離」といいます。計算での算出距離はブレーキの性能が最大限に発揮された場合と考えて下さい。

制動距離の計算式は


「車の速度(時速 (km/h))の2乗 ÷(254×摩擦係数)」(m)


です。
摩擦係数とは、タイヤと路面の摩擦具合を表す数値で、一般的には乾いた路面であれば0.7、濡れた路面であれば0.5で計算します。車の速度が 時速 50 km/hの場合、14.1(m) になります。計算の根拠は、運動方程式から導出されていて、時速換算や重力加速度などをまとめて 係数 254 になっています。計算の導出の詳細は、リンクのブログに書かれていますので興味がある方は参考にして下さい。

ブログリンク → ■ 車の数学(22):車の停止距離の計算


制動距離は、路面の状態、車両の重量、乗客数、積荷、タイヤの条件などで異なります。計算はあくまで代表する状態での距離ということ、また、雨の日は、晴れの日に比べて制動距離が延びることも頭においておくのが良いと思います。

先の計算式で自動車の速度に対する停止距離を計算しました。反応時間は0.75秒としています。


結果からみると、速度から車間距離を考えることはもちろん根拠があると言えます。

しかし、これまで広く啓蒙されてきた、これらの 「速度と同じ数値を基準に車間距離をとる」という方式は、状況がかわる中で目視で距離をはかることが難しい というデメリットがあると思います。なので、以下の「車間距離を時間で考える」方法をお勧めしたいと思います。


車間距離を時間で考える

欧米では車間を「距離」ではなく、「時間」で捉える考え方が広がっているようです。前を走行する車両が標識など道路上の目印を通過した時点から、自分の車両がその目印を通過するまでの時間を測るのです。混雑時は約2秒、混雑していない場合は2秒以上、減速に時間がかかる大型車などは3秒以上と時間を目安にする方法を推奨しています。


具体的なやり方は、走行中に目標物となる電柱や照明灯や標識などの目印(※道路上の停止線などなんでも良い)を前の車が通過した瞬間を「0」とします。


そして、自分の車が同じ目標物を通過するまでに「2秒以上」数えることができれば、車間距離が2秒以上あることになります。


この方法は各地の警察でも取り入れられていて、埼玉県警ではゆとり車間距離「0102運動」(ゼロイチゼロニ運動)として実施しています。埼玉県警では正確な2秒をカウントするために「1、2(イチ、ニ)」と数えるのではなく、「0、1、0、2(ゼロ、イチ、ゼロ、ニ)」とゼロをいれて数えることを推奨しています。これだと多分3秒ですね。


危険を察知し、ブレーキに踏み替え、ブレーキが利き始める間の空走距離、実際にブレーキが利やき始めて車が停止する制動距離を合わせると約3秒という実験データをもとに、大分県では追突事故を防ぐためには、3秒の車間距離を保ったゆとりある運転が必要だと啓蒙しています。


この2~3秒の時間で車間距離を考える方法について、先ほどの計算で求めた「停止距離」と比較してみます。(反応時間は0.75秒での計算です。)


「制動距離」と「時間で考える車間距離」の比較では、時速が 50~60 km/hでは2秒でも良いようですが、時速が 60 km/h以上では 3秒の車間距離が必要なようです。この結果はあくまで普通自動車の標準的な条件の良い場合を考えていますので、余裕をもって考えるならば、3秒~4秒の車間距離が良いようです。
 

私の場合は 50 km/h以下の速度での走行でも車間距離は「時間で考える車間距離」より短めでした。自分の普段の車間距離を、「時間で考える車間距離」と比較してみると良いかもしれません。 


なお、時間で考える車間距離のために、目標物に注意を払いすぎて運転の安全確認がおろそかにならないよう、くれぐれもご注意願います。


車間距離をとらない場合の違反

車を走行する際に前の車と適切な車間距離を取らず、近づいて走ることは車間距離保持義務に違反します。一般道での車間距離不保持は「車間距離不保持違反」、高速道路での車間距離不保持は、「高速自動車国道等車間距離不保持違反」という違反になります。道路交通法第26条により、車間距離不保持違反の罰則は一般道路は5万円以下の罰金、高速道路は3ヵ月以下の懲役または5万円以下の罰金になります。


普通自動車の場合、一般道では、反則金 6,000円、違反点数 1点。高速道路では、反則金 9,000円、違反点数 2点です。


通常の運転中に車間距離で違反を取り締まられることはほぼ無いと思いますが、あくまで道路交通法では「前の車が急停止した場合でも衝突しない距離を保て」と規定されていることを頭においておくのが良いと思います。


車間距離のまとめ

自動車の走行中の前車との適正な車間距離を考えてみました。ある程度数字で頭に入ると運転中もイメージがしやすくなったように思います。今までは、どちらかというと車間距離を詰め気味で走行していたのだと、あらためて考えることができましたし、必要な車間距離のイメージが明確になったことで、前より車間距離を多くとって走行するようになりました。車間距離をイメージできることで運転も変化したように思います。


 

停車中の車間距離についてはこちらで





Related posts

Leave a Comment